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循環を設計する経営者、収穫を急ぐ経営者

2026-06-19

企業経営と森林経営の共通点


私は最近、企業経営と森林経営には多くの共通点があると感じています。どちらも本質は収穫ではなく、循環のマネジメントです。売上や利益は企業にとって大切な成果です。しかし、それだけを追い続ける経営は、森で言えば木を植えずに伐採だけを続けるようなものです。短期的には収穫量が増えるかもしれません。しかし、やがて資源は枯渇し、成長は止まります。

一方で、長く続く森は違います。木を植え、育て、間引き、収穫し、また植える。収穫と育成を繰り返しながら、何十年、何百年という時間をかけて豊かな森林を維持しています。企業も同じです。人材育成に投資する。新しい事業に挑戦する。理念を磨き続ける。組織の仕組みを改善する。これらは短期的には利益を生まないかもしれません。しかし、未来の収穫を生み出すための「植林」です。



投資と拡大の原則


森林経営には、成長量の範囲内で収穫するという考え方があります。毎年成長する量以上に伐採しなければ、森林資源は持続可能になります。企業経営も同じです。組織が育つ速度以上に事業を増やせば、現場は疲弊します。人材育成が追いつかないまま拡大すれば、品質は低下します。理念浸透が不十分なまま組織だけが大きくなれば、一体感は失われます。成長以上の収穫を求める経営は、未来を切り売りしているのと変わりません。大切なのは、利益を最大化することではなく、再生産できる範囲で成長し続けることです。



人工林から学ぶ「増やす」という発想


日本の森林の約4割は人工林です。自然にできた森ではなく、人が植え、育て、管理しながら受け継いできた循環型資産です。人工林は、植える → 育てる → 間引く → 伐採する → 再び植える、というサイクルを50年から100年という長い時間をかけて回しています。

林業において重要なのは、どれだけ伐るかではありません。伐った後にどう育てるかです。近年、日本の森林政策でも「伐って、使って、植えて、育てる」という循環型の森林経営が重視されています。興味深いのは、森林経営者が考えているのはどう収穫するかだけではなく、どう増やすかだということです。木を伐ることは手段であり、目的ではありません。企業も同じではないでしょうか。売上を上げること。利益を出すこと。もちろん重要です。しかし、それらは企業の存在目的ではなく、循環を維持するための手段です。本当に考えるべきことは、人材は増えているか、信頼は増えているか、顧客との関係性は深まっているか、挑戦する人は増えているか、次世代のリーダーは育っているかということです。




収穫と投資のバランス


現在、日本の人工林の多くが利用期、つまり収穫期を迎えています。しかし一方で、伐採後の再造林が十分に進まず、収穫が投資を上回る状況も課題となっています。これは企業に置き換えると、人材育成をしない、新規採用をしない、研究開発をしない、利益だけを回収するという状態に近いかもしれません。それは、短期的には成果が出るでしょう。しかし、その先に持続的な成長はありません。人工林経営で最も重要なのは、今年どれだけ伐ったかではなく、50年後も森が存在しているかという視点です。

企業も同じです。売上や利益は収穫です。しかし、長寿企業が見ているのは再造林の部分です。人材は育っているか。理念は継承されているか。次世代のリーダーは育っているか。新しい事業の種は植えられているか。その積み重ねが、未来の成長を生み出します。




長く続く組織は循環を設計している


森は毎年大きく成長しているわけではありません。成長と再生を繰り返しながら、何百年も存在し続けています。長寿企業も同じです。短期的な利益だけを追いかけるのではなく、次の世代に何を残すかという視点で経営をしています。経営者には二つのタイプがいます。収穫を急ぐ経営者。循環を設計する経営者。どちらが短期的に成果を出すかは分かりません。

しかし、10年後、50年後、100年後まで見据えたとき、残るのは循環を設計した組織です。森林経営では、伐ることが目的ではありません。次の森を育てるために伐る。企業経営も同じです。利益を得ることが目的ではない。次の世代へ価値をつなぐために利益を得る。私は、企業経営とは利益を最大化する仕事ではなく、未来へ続く循環をつくる仕事なのだと思っています。HIRONORI KAJIKAWA



(画像は林野庁HPより引用)









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